frantic87's diary

書きたいときに、書きたいから書く

日々稽古

横綱白鵬は、土俵入りするとき常に摺り足で歩くそうだ。他の力士で常に摺り足を心掛けているものはほとんどいないらしい。こういった面にこそ、横綱としての力量が裏付けられていると感じる。
土俵入りの動作が稽古になっているという点だけでも他の力士と差をつけられるし、そういった何気ない動作にも気を払っていることが意識の高さを伺わせられる。きっと白鵬にとっては、稽古とそれ以外という区別が希薄なのかもしれない。
対戦相手と相対してから気持ちを切り替えていたのでは遅い。剣道においても相手と向き合って礼をする段階から勝負は始まっている。剣道では、九歩の間合いから、竹刀を納めたまま礼をして、三歩前に進み、抜刀しながら蹲踞の姿勢を取り、合図とともに立ち上がって試合が始まる。礼をする瞬間から相手の目から視線は外さず、呼吸を合わせるように同時に蹲踞までの動作を行う。気力の充実をはかって、試合開始直後に心が乱れることのないように備える。
もちろん、言葉にすれば簡単なことだが、実際に行うのは難しい。普段からそういった意識を持って、細部にいたるまでの気配りが必要だ。武道が礼法や着装に気を使うのは、そういった気力の充実に関係しているからではないかと少し思っている。
町を歩きながらそんなことを考えていた。
ただ歩く動作ひとつとっても体幹を揺らさず、地面を掴んで前に進むのはなかなかに難しい。